この皮は使えるとこなんかないよって言ったのに僕が何かしようとしてるもんだから、お父さんもニールンドさんも不思議そうな顔してこっちを見てるんだよね。
でもね、今から何をやるのかを話して失敗したら恥ずかしいでしょ?
だからとりあえず、思った通りやってみる事にしたんだ。
とりあえずは道具作り。
僕は腰のポシェットに手を突っ込むと、いつも入れてる鋼の玉を何個か取り出したんだ。
「何だ、ルディーン。鉄で何か作るのか?」
「うん。この皮を切る道具を作るんだよ」
僕が鋼の玉の使い方を教えてあげると、お父さんは変な顔したんだよね。
だから何でだろう? って思ったんだけど、お父さんが言った次の言葉でその理由が解たんだ。
「ルディーン。わざわざ作らなくても、解体用の小さなナイフを持ってるだろ? ポイズンフロッグの皮じゃないんだから、これなら普通に切れるんじゃないか?」
グランリルにいる人たちってみんな、いっつも解体用のちっちゃなナイフをポシェットに入れて持ってるんだよね。
お父さんは僕のポシェットにもそれが入ってる事を知ってるから、ブルーフロッグの背中の皮を切る道具を作るって聞いて変な顔になっちゃったみたい。
でも僕が今から作ろうとしてるのは、ただのナイフじゃないんだよ。
「ナイフじゃないよ。ちゃんと皮を切る道具を作るって言ったじゃないか!」
「皮を切るのに、ナイフじゃないのか?」
だから違うよって言教えてあげたんだけど、お父さんはよく解んないみたい。
でも、どうやって教えてあげたらいいのかなんて僕にも解んないから、とりあえず作って見せてあげる事にしたんだ。
「じゃあ作るね」
僕はそう言うと、何個かの鋼の玉を材料にしてクリエイト魔法を使ったんだ。
そしたら、
「えっ!?」
なんでかお父さんじゃなくって、ニールンドさんがびっくりしてこんな声を出したんだよね。
でも、その声で僕もびっくりしちゃったもんだから、クリエイト魔法は失敗。
鋼の玉は僕が思ってた形になる前の、変なとこで固まっちゃったんだ。
「ニールンドさん、どうしたの? 僕、びっくりしてクリエイト魔法、失敗しちゃったじゃないか!」
「えっ? あっ、だって、ルディーン君がクリエイト魔法を……と言うか、なぜ金属のクリエイト魔法が使えるのよ!」
どうやらニールンドさんは、僕がクリエイト魔法で鋼の玉の形を変え始めたもんだからびっくりして声が出ちゃったみたい。
でもさ、なんでびっくりしたんだろう?
「さっきドライを使ったから、僕が魔法を使えるって知ってるよね?」
「ええ。それ以前にルルモアから聞いてるわ」
「だったらなんでびっくりしたの? ルルモアさんに見せた時はびっくりしなかったのに」
僕ね、ルルモアさんの前でクリエイト魔法を使った事があるんだよね。
でもその時はすごいねって褒めてもらったけど、全然びっくりしなかったんだよ?
なのにニールンドさんは、なんでびっくりしたの? って聞いてみたんだけど、そしたら、
「ルルモアは冒険者の相手をするのが仕事だもの。クリエイト魔法がどれだけ難しい魔法かなんて知ってるはずないじゃない」
って言われちゃった。
でね、じゃあ何でニールンドさんはびっくりしたのかって言うと、冒険者ギルドで素材の買取や販売をしてるから、魔道具を作る魔法使いさんの知り合いが多いからなんだってさ。
「クリエイト魔法はね、発動自体は魔法が使える人ならだれでもできるけど、作り変える物の性質がよく解ってないとうまく働かないそうなのよ」
これは僕も知ってるんだ。
だって、前にロルフさんたちが教えてくれたし、石でかまどを作ろうと思った時も何度か失敗したもんね。
だからそう言ったんだけど、そしたらニールンドさんはびっくりする事を言い出したんだ。
「あら、知ってたの? って、そうか。グランリルなら鍛冶屋もあるだろうし、そこでやり方を教えてもらったのね」
金属のクリエイト魔法が使える人はね、みんな鍛冶屋さんや武器職人さんのとこに通って、鍛冶のやり方を教えてもらうんだって。
「普通の魔法使いは大人になってから覚えるから、クリエイト魔法が使えるようになるまでに早い人でも1年以上、遅い人だと3年くらいかかるって聞いてたけど」
どうやらニールンドさんは僕が村の鍛冶屋さんに教えてもらったんだろうって思ってるみたいで、うんうん頷きながら、やっぱり小さいころからやった方が覚えるのも早いって事なんでしょうね、なんて言ってるんだ。
でも、それを聞いてびっくりしたのがお母さんだ。
「ルディーン、いつの間にそんな危ない事してたの!?」
僕、お家でもまだ一人じゃ火を使ったお料理をしちゃいけないって言われてるでしょ?
なのに鍛冶屋さんに行ってたなんて聞いたもんだから、お母さんは怒っちゃたんだ。
「そんな事、僕、やってないよ!」
でもね、鍛冶屋さんなんか教えてもらうどころか、お家ん中に入れてもらえたことも無いんだよね。
だから慌てて違うよって言ったんだ。
そしたらそれを聞いたお父さんも、僕がそんなことやってないんじゃないかなぁ? ってお母さんに言ってくれたんだよ。
「シーラ。ルディーンは朝のお手伝いに始まって、昼間もいろいろと村の仕事をしてるんだぞ? そんな暇があるはずないだろ。何より、こんな小さな子を鍜治場に入れると思うか?」
「そう言えばそうね」
鍛冶屋さんって真っ赤になってる鉄をいっつもトンテンカン、トンテンカンって叩いてて危ないから、子供は絶対入っちゃダメって言われてるんだよね。
だから僕が教えてって言いに行っても入れてくれるはずないよってお父さんが言ったもんだから、お母さんは僕にごめんねって誤ってくれたんだ。
「それじゃあルディーン君は、初めから金属のクリエイト魔法が使えたって言うんですか?」
でもそれを聞いたニールンドさんは、びっくりしてこう聞いてきたんだけど、そしたら、
「そう言えば、気付いたら使えるようになってたよなぁ」
「ええ。もっと小さいころから、銅の風車とか作って遊んでたわよね」
なんてお父さんとお母さんが言ったもんだから、何か納得しちゃったみたい。
「なるほど。まだ何の先入観もない内に金属に触れていたわけですか。ならそれが原因かもしれないですね」
でも、それはすごい事なんだよって僕たちに教えてくれたんだ。
「魔法使いは元々、結構高収入なんですよ。でも、その中でも金属のクリエイト魔法が使える人は特にお金が稼げるんです」
鍛冶屋さんや武器職人さんたちがいれば剣とかの武器や鍬みたいな農具は作れるよね?
でも、細かいものとか複雑なものは作れないから、そうのが欲しい時はすっごく腕のいい彫金師さんに頼まないといけないんだって。
でもそんな人はあんまり居ないからとっても忙しいし、何処の街にもいるわけじゃないから、そんなときはクリエイト魔法が使える魔法使いさんに頼むんだってさ。
「貴族さまや大商会は自分の紋章を持っているでしょ? それを使った封蝋印が欠けたりした時なんかは、彫金師に頼むとかなり時間がかかるけど、クリエイト魔法が使える魔法使いに頼めば短期間で仕上がるって事で重宝されてるそうですよ」
それに貴族様のお仕事をして気に入られると、雇ってもらえることもあるんだって。
だからお金に余裕がある魔法使いさんは、鍛冶屋さんにお金を払って教えてもらいに行くんだってさ。
「ルディーン君も、こんな小さい内から金属のクリエイト魔法が使えるなら、いつかは貴族様の目に留まるかもしれないわね」
そしたら一生安泰よって笑うニールンドさん。
でもね、僕は貴族様に仕える気なんてないんだ。
「僕は村で狩人やるんだもん。だからそんなお仕事、絶対しないよ。お父さんやお母さんと、ず〜っと一緒にいるんだ!」
だから貴族様が聞いて来ても、クリエイト魔法が使える事はないしょにしてねって言ったら、
「解ったわ。じゃあ、この話は内緒ね」
ニールンドさんは僕の頭をなでながら、にっこり笑ったんだ。
おかしい? ブルーフロッグの皮を使ってモノづくりをする回だったはずなのに、なぜかクリエイト魔法の話になってしまった。
金属のクリエイト魔法が実はとても儲かると言う設定は前から考えていて、どこかでこの話をしようとは思っていたのですが、まさかこのタイミングで書くことになるとは。
前に金属製の試験官をルディーン君が作った時にロルフさんが話してた魔法使いを出して、その時に実は儲かるんだよってばらすはずだったんだけどなぁ。
おかげで彼の出番が無くなってしまったw